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​夏涼しく、冬暖かい不動産を知る、探す、作る
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おしゃれはがまん?ロシアのカフェが暖かい話。

「おしゃれカフェの冬」というと、

「アラジンストーブがこうこうと燃えさかり、灯油とコーヒーの香りが入り混じる空間で、足元の寒さをひざ掛けでしのぐ」

なんてイメージ、ありませんか?

やっぱり、おしゃれは、がまんだよね。そだねー。

ところが、日本よりもずっと寒いロシアにいってみたら、おしゃれカフェですら暖かくて空気もきれいだったそうなのです。

産油国だし、暖房ガンガン炊いてるの?  いえ、実は違いは断熱なんです。

見た目だけでなく体にも快適なカフェがあったら、大好きな人とのおしゃべりがますます弾みそう。そんなカフェが近くにあったらいいですね。

ということで、女子力高めの特派員からカフェレポートが届きました。

真冬なのに、女性がノースリーブでお茶してます。おそロシア。

極東ロシア担当,森です。先日,大学の仕事でハバロフスクに行ってきまして,その際に二回ほど訪問したアムール川沿いのカフェのことを書きたいと思います。

まず,ハバロフスクですが,ロシア極東の主要都市で人口は約50万人ほどです。気候は夏暑く,冬寒い(晴天日が極端に多い)大陸性の気候で夏の日平均温度が21℃(札幌は22℃です),冬は日平均温度でも-23℃あります。観光ガイドを少し,ハバロフスクは成田から三時間の距離にありますが,まちはヨーロッパの雰囲気が強く,市中心部の目抜き通りがアムール川と接する場所にはウスペンスキー寺院のあるコムソモーリスカヤ公園があり,そこから,アムール川に降りることもできます。


アムール川とウスペンスキー寺院

北海道の人間にとってアムール川は流氷のもとなのでついついはしゃいでしまいますが,危ない場所もあります。


すでにはしゃいじゃった先客がいたようです。決して僕ではありません。


さて,今日紹介するのはこの公園の隣のベストロケーションにあるDuetというカフェです。外観写真を撮り忘れましたが,古いオフィスビルの足元にある,オーガニック系のフェミニンなカフェです。

写真はケーキセットでだいたい700円くらいでしょうか。ロシアのカフェとしてはすこし高め,強気な値段設定です(場所がいいからですね)。


「おしゃれでも我慢しない」ロシアのカフェ

それでは,本題にはいります。下の二枚の写真がこのカフェのサーモカメラの画像です。

(左)カフェの床。床表面の温度は、なんと23℃!

(右)前出のノースリーブの女性周辺。 赤い部分は窓下の放熱器。

この時,外は約-20℃でしたが,室内は25℃程度でした。

まず,一番驚くのが床が暖かいことです。表面温度23℃。

他の場所と比べるとすこし低くなっているので,床暖が入っているわけではありません。右側の画像からもわかるように暖房は窓下の放熱器のみです。これだけ暖かいと床が乾きます。札幌のカフェにありがちな転倒注意の看板も必要ありません。

また,右側の画像の窓の温度ですが,画像左上に表示されている16.7℃が窓の温度になっています。外の温度は-20℃ですから,非常に室温に近いことがわかります。

窓はトリプルガラスの樹脂サッシを使っています。もちろん,リノベーションです。

もしも日本のカフェのようにシングルガラスを使ってしまうと,室温は同じだとしても,ガラスの表面温度が下がり,そこからの放射やドラフトによって体が冷えてしまうため,「なんか寒い」という状態になります。

多分,写真の女性は日本のカフェではノースリーブではいられないでしょう。札幌のカフェで窓側の席の人がコート着たままコーヒーを飲んでるあれです(写真下参照)。


札幌のなんか寒いカフェの窓際。

僕のボールペンではなく奥の男性の服装にご注目ください


また,ガラスの表面温度が下がってしまうと,結露が生じてしまうので窓下に放熱器をおいて,表面温度を上げようとします。また,換気をして室内の相対湿度を下げようとしますので,室内の空気が乾燥しますし,常に空気がうごいていてざわざわした感じになります。カフェで話をしていたら喉が痛くなって風邪ひいたことはないでしょうか?また,場合によっては,お店が暖房をケチってしまって灯油のファンヒーターを置いてしまったりします.こうなると,油のにおいが充満してしまいます。それを避けるために窓を開けて換気,そして,部屋が寒くなる・・・もうなんのためにケチっているのかよくわかりません。


大学はもちろん、郊外店舗もトリプルサッシが当たり前。中国、韓国も同じ状況です。

みなさんはロシアの建物に対してどんな印象を持っているでしょうか?

エネルギーリッチな国なので,断熱性能なんかなんにも考えていないんではないか?と考えていないでしょうか?

私は昨年から数回ロシアを訪れています。

その中で最も驚いたのが,多くの(ほとんど全てといってもいいくらい)建物で樹脂サッシのトリプルが使われていることです。印象としては,正反対の印象です。但し,もちろんエネルギーリッチな国であることは変わりません。室内環境を整える。温度差のない,あたたかい空間を作るために,そういった選択がされているようです。

(左)太平洋国立大学のトイレ(トイレの窓も樹脂サッシ)

(右)建設途中の郊外店。こういった建物でもやはり,トリプル+樹脂サッシが使われています。


ロシアだけでなく,中国,韓国も同じ状況です。なぜか,建物の断熱性能の面では日本は完全に遅れてしまっています。


ロシアに来てニュータイプに進化した学生たち。

「感じる!トリプルとペアの違いを。」


(左)古いけど暖かくて居心地のいいドミトリー

(右)複層(ペア)ガラスとトリプルガラスの違いを感じ取れるように進化した学生


今回は,学生の交流事業の一環でPNU(太平洋国立大学)で行われたシンポジウムに学生たちと参加してきました。ぼくも学生たちもPNUのドミトリーに宿泊させてもらったのですが,建物は古いんですが本当に居心地が良く,快適に過ごすことができました。

ドミトリーは日本の集合住宅と違い,階段室や廊下も十分に暖められ,一度,建物内に入ってしまえば,コートいらずです。

また,配管等の凍結トラブルも避けることができ,維持管理の面からも有効です。日本の学生たちがフェアウェルパーティーの際に

「このレストラン複層ガラスなんで冷放射感じますね」

と言っていました。

やはり,人間は安定した環境に居住すると,外界の変化に対して敏感になります。

彼らの多くはデザイン系の学生でしたが,ロシアの滞在を通して,室内環境の重要性に目覚めたようです(僕の授業はなんだったんでしょう?)。

「日本に帰って風邪ひかないでね」と送り出し,彼らが将来計画する建物に期待してしまうのでした。 

おしまい。

(文章 森太郎)

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