春分の日が過ぎましたね。札幌も雪解けが進み、春が近づいてきたのを感じます。
さ~て、今週のエネモレ百景は、「春のうっかりエネモレにご用心」と「農業の稼ぎが原油に消える!北海道の怖い話」の二本です。
こんにちわ。企画部の丸田です。
春分の日には、子どもたちを連れて今年で開設60周年の小樽水族館に行ってきました。緩~くてやさしい雰囲気の海獣ショーに癒されて大満足。
そこには個性や能力差を受け入れてくれる包容力がありました。みんな違ってみんないい。
仕事や子育てに疲れたら、ぜひ足を運んでみてください。
さて、今回最初にご紹介するのは、春にぴったりのエネモレ。
「断熱見える化チーム」の酒井さんが昨年の春、撮影したものです。
今回は、年度末でお忙しい酒井先生に代わって私がご紹介させていただきます。

あれ、なんかない。
この写真、歩道の一部が周辺より高温になっているようです。
一見、北海道でよく見る、ロードヒーティングの写真に見えます。
歩道の雪を溶かし、我々市民を転倒から守ってくれる冬の強い味方です。
エネモレ映えする箇所なので、見える化チームでも、この冬、たくさんロードヒーティングの写真をとりました。
しかしこの写真、実は、意図して撮られたものでは、、、ないのです。
この写真は、写真とサーモ画像を合成するモードで撮影されているので、サーモデータのほかに、うっすらと物のエッジが映っています。
そのエッジをよく見ると、ロードヒーティングで高温になっていない歩道の部分も、縁石がくっきり移っているのがわかります。
あれ、雪は?
雪はどこにあるの?
実は、酒井さんは、建物のエネモレを撮ろうしたところ、偶然、ロードヒーティングが映り込んでしまったとのこと。
その時、街にはまったく雪がなかった。
だけれど、ロードヒーターは稼働していたのだった。(たぶん、熱源は電気か灯油。)
怖いですね~。
最近のロードヒーターには積雪や外気温を探知するセンサーがついているものが多いのですが、そちらが故障していたのでしょうか。
それとも、なにか経費を使い果たさなければならない特別な事情があったのでしょうか。
タンクに灯油が余ってたから、シーズンオフ前に使い切ったとか。
もしかして、お客様の足元を温めようという、最上のホスピタリティーが屋外まであふれ出たとか?
あれ。信長のわらじを、秀吉が懐で温めていたというあれ。
セレブ、いや、天下人の流儀!
さらに進む妄想と時
「エネモレが誰にも気づかれないなんてのう。あの頃は平和なもんじゃった。。。」
晩年を迎えた酒井さんが懐かしそうに眺めているのは、あのエネモレ写真です。
時は、2060年。
賢いエネルギー網「スマートグリッド」が高度に進化したこの時代では、エネルギーの生産と消費はリアルタイムで捕捉、最適化されています。
不要なエネルギー消費は瞬時に発覚し、エネルギーパトロール隊「電気事業連合隊」によって自動的に罰金が科せられます。
21世紀のエネルギー消費に対する厳罰化を、20世紀後半の飲酒運転の厳罰化の流れに例える人は少なくありません。
あれ?ちょっと時が進みすぎたようです。
エネエモン、一緒に元の時代に帰ろう。
あれの稼ぎがすべてあれに
四次元○○を使って2018年の現代に戻ってきた我々。
たどり着いたのは・・・
どうやら酒井さんの勉強部屋のようです。
勉強の得意なはずの酒井さんが机の上の資料を見て頭を抱えています。
「なんてことだ・・・これじゃ、北海道が元気になれるはずがない!」
酒井さんは、「エネルギーで北海道を元気にしたい」と考えるまじめな学者さんです。
さて、酒井さんが机に載っている資料を覗いてみましょう。
ふむふむ。北海道が海外から輸入している品目のようですよ。

なんと、輸入の半分以上が石油。輸入の総額はというと

H25年の輸入総額は18981億円なので原油関連の輸入を計算してみると
18981×0.566=10743億円=1兆円ちょっと!
1兆円。すごい額です。でも北海道って大きいので、ちりも積もればそんなものではないか、と思ってしまいそう。
では、1兆円のスケール感を北海道の産業で見てみましょう。
北海道の基幹産業(北海道外からお金を稼ぐ、稼ぎ頭の産業のこと)の一つである農業の産出額

同じく一兆円!
これでは、働けど働けど北海道の暮らし楽にならず。
酒井さんが頭を抱えていたわけです。
続いて、家庭でのエネルギー消費の全国比較を見てみましょう。

http://www.mlit.go.jp/common/001064005.pdf
やはり、寒冷地北海道では、他地域とくらべてエネルギー消費量が大きいですね。
当然、光熱費の負担も、他地域の家庭より重いといえるでしょう。
内訳をみてみます。
北海道では、エネルギー消費量の7割以上を、給湯と暖房、つまり熱に使用してます。熱に使うエネルギー消費量は、全国平均の全消費量を上回る量です。
家庭の光熱費を下げるためには、「熱をいかに効率的に使うか」ということが肝になりそうです。
少ない熱エネルギーで暮らす技術とは
酒井さんは考えました。
我々の暮らしで、快適さを損なわず、少ない熱エネルギーで暮らす技術って何だろう。
最新の省エネ機器も魅力的だけど、メーカーは海外や本州のものばかりです。
高額な機械購入代金は、機械と引き換えに北海道から出ていきます。代金のもとをとるのには十年以上の年月がかかるものも多い。さらに、故障をしたり、耐用年数がすぎれば、再度買い替えが必要です。
実は、北海道は、機械貧乏としても超一流。

地域内外のやり取りにおける「輸移入」は、「北海道内への国内外からの輸入」、「輸移出」は「北海道から国内外への輸出」を意味する言葉です。
稼ぎを圧倒的に上回る、機械購入の支出。
機械も必要だけど、他に、もっと、北海道からお金が流れ出ない方法はないだろうか。北海道だけで、今すぐできる方法はなんだろう。
酒井さんは思い当たりました。
「北海道を元気にするには、(家の)断熱が大事なんじゃないだろうか。」
この酒井さんの気づきが、我々、建築の専門家たちやオープンデータの専門家たちを引き寄せ、「断熱見える化」チームが発足するきっかけになるのでした。
友情、努力、勝利!酒井さんの旅はまだ、はじまったばかりです。
今後は、今世界で話題の社会問題「燃料貧困」や、「支出を絞るだけでなく、積極的に地域でお金を回す断熱」についてのレポートも予定しております。
ひきつづきどうぞよろしくお願いいたします。
(文章 丸田絢子)
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