​夏涼しく、冬暖かい不動産を知る、探す、作る
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もしかして燃料貧困?学生生活日欧比較

最終更新: 2018年4月18日

今週の断熱不動産は、学生の下宿環境を日本とフィンランドで比較してみます。

そろそろ、「蛍の光」が全国で歌い終わったころですね。

蛍の光~窓の雪で勉強するって、究極の省エネ技みたいなお話ですが、そんなことを続ければ目が悪くなってしまいそうです。見方を変えれば省エネのために健康を対価に差し出してるともいえるかもしれません。家の寒さを我慢するのも似たようなものかもしれませんね。

日本には、古くより健康を犠牲にして頑張る美談がたくさんありますが、やっぱり体が資本です。もう21世紀なので、根性ではなくロジカルに結果にコミットしていきたいところです。

さて、住環境においても日本の学生は、快適性、生活コストともに欧米に比べ厳しい状況に置かれているようです。勉学にも身が入らないのではないかと心配になりますが。。。



こんにちは,札幌もだいぶ暖かくなってきました。

1月にラップランド大学のAnttiさんと作った雪のスクリーンもだいぶ溶けてしまいました。2018年度はラップランドと札幌で同じようなものを作るワークショップをやります。

たしかに雪は住生活にとっては厄介者かもしれませんが,こんなに生活に楽しさを与えてくれるものもないなと思います。雪万歳

今回は,12月に研究室の学生が北欧を旅してきたレポートをもとに日本と北欧の学生の生活環境の違いについてレポートしたいと思います。なお,今回,学生たちが研修に行くことができたのは,前田財団の助成のおかげです。先日,報告会がありましたが,学生たちの成長に驚きました。記して感謝します。

さて,学生たちはフィンランド→スウェーデン→デンマーク→ノルウェー→フィンランドを約3週間の行程で旅をしてきました。行く先々で多くの方のお世話になり,貴重な経験をしてきたようです。スウェーデンからは今回の旅行が縁でKTH(王立工科大学)のIvan先生が9月に札幌に来て,スウェーデンのBuilding Environmentに関する講演をしていただけることになりました。スウェーデンは新住協の教祖,鎌田先生が若かりし頃に留学して北海道に高断熱住宅を普及させるきっかけとなった国です。ご興味のあるかたは参加していただければと思います。


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断熱不動産用語解説 by編集部

「新住協」

一般社団法人 新木造住宅技術研究協議会の略称。

鎌田紀彦室蘭工業大学名誉教授を中心に全国の工務店、設計者が組織した団体。

住環境改善に継続して取り組み、高断熱高気密工法の確立と普及に貢献した。

建築による社会課題の解決例としては、戦後、西山宇三による寝食分離の研究と建設省・日本住宅公団によるダイニングキッチンの開発以降、最大の功績といえる。

と将来wikiに書かれるかもしれません。

あれ、その間、他の建築家の人はなにをやって。。。(後半に続く)

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では,本題に入りたいと思います。ここでは,北大の学生とオウル大学の学生に実施したアンケートから両国の学生の住まいの室内環境,エネルギーに対する意識の違いについてコメントしたいと思います。まず,オウル大学ですが,フィンランドの中部のボスニア湾に面した港湾都市,オウルに設置されているフィンランドでは有数の大学です。オウル市の人口は約20万人,オウル大学の学生数は約15000人となっています。北大の学生数が約18000人ですからちょうど同じ規模の大学ということになります。


オウル大学の通学路,学生は冬でも自転車通学をします。札幌とは雪の量が少し違いますが,道さえ整備されていれば冬でも自転車は使えます。


オウル大学建築学部のJanne教授。歴史的な建物のリノベーション等を専門にしています 。

オウル大学のJanne先生に協力していただいてオウル大学の学生にアンケートをお願いしました。





まず,下図は北大の学生(左側),フィンランドの学生(右側)の暖房エネルギーに関する意識の違いになります。北大の学生の7割,オウル大学の学生の6割が暖房エネルギーに関して意識をしているということがわかります。

ただ,後述するのですが,フォーカスしているものが全く違うのです。


次に室温です.両大学とも19-22℃が最も多い設定温度となっています(他の地域の学生に比べればしっかりと暖房しているのではないでしょうか)。ただ,18℃以下+暖房しないがオウル大学の学生にはほとんどいないのに対して,北大には4割ほどいます。




一方、自分の住まいが寒いと感じているかどうかでは、北大は41%が寒い,または

寒いと感じています。なのに、暖房をしない、または18℃以下で暮らしている学生も北大では4割もいるわけです。もしかすると,北大の学生はオウル大学の学生よりも寒さに対して我慢強いのかもしれませんね。




地球のことを考える余裕があるのは、衣食住が足りてこそ


最後に暖房コストです。北大の学生の方が高額になっています。




実は,フィンランドの場合には暖房費が家賃に含まれている場合が多く、つまり、室温も含めてアパートを貸しているわけです。日本もこうなったほうが良いように思います。


簡単な比較はできないのですが,研究室の学生が家賃と物価を含めてサーベイしてみたところ,ちょうど暖房コスト分くらいオウル大学の学生の方が家にかけるコストが低くなっているようです。

ここで,最初のグラフに戻ります。

実は,オウル大学の学生の暖房エネルギーに対する意識なんですが,

日本の学生が冬の生活費のことを考えているのに対して,オウル大学の学生は環境問題として暖房エネルギーを考えているようなのです。

やはり,衣食住が足りて初めて次のステージに行くことができるというのは正しいように思います。もちろん,日本の方がより切実な問題として暖房のことを考えなければならないのですが,こういった状況ではその場しのぎのソリューションがでがちです。


低所得者を苦しめる燃料貧困とは

以上の研究レポートですが,私が関係している研究の一部として,これから建築学会等で発表していく予定です。「日本の寒冷地におけるFuel Povertyに関する研究」という研究になっています。Fuel Poverty(燃料貧困)はイギリスをはじめとしたヨーロッパ圏で問題となっている状況なんですが,


所得が低い→賃料の安い質の低い住宅に住む→暖房費が高くなる→しかし払えないので暖房をけちる→室内環境の悪化→健康を害する→治療にお金が必要→可処分所得が減少、技能習得、子どもの教育などにお金がかけられない→さらに低所得に


にという負のスパイラルに入っていってしまうことを言います。


誰が燃料貧困を解決できるのか

振り返ってみると,日本でもこのような状況は多くあるのではないでしょうか?

また,この問題は世帯だけではなく,地域にも同様のことが言えるように思います。

どうでしょうか?

僕はこの問題に対して建築は大きな役割を果たせると思っています。

なのに,日本のいわゆる建築家の方々はなにもしようとしません。

ここ最近の環境をtipsとして使うような環境建築の議論には辟易としてしまいます。なにか建築家として評価されるシステムが間違っているのではないでしょうか?


今冬は環境建築に関するあまり生産的ではない議論が身の回りで行われて辟易しておりますが、僕は僕の持ち場で今日も頑張ろうと思います。


(文章 森太郎)

© 2018 断熱見える化チーム

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