​夏涼しく、冬暖かい不動産を知る、探す、作る
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あの観光名所をサーモカメラで覗いてみたら

最終更新: 2018年3月8日

「エネモレ百景」は、エネルギーがモレてる場所を探るプロジェクト。

趣き深いサーモ画像を眺めながら、暑さ、寒さの原因と仕組みを探ります。

第一回目の今回は、札幌の有名な観光名所をサーモカメラで撮影してみました。


季節は12月中旬、私が忘年会に行く前に、たまたま通りかかった某時計台です。

Wikipedia によれば、1878年建築、バルーンフレーム構造の木造2階建(時計部分の塔屋を除く)で、もともとは北大の施設だったのですね。1906年に今の建物から130m離れた場所から移転し、1970年に重要文化財に指定されたそうです。

観光客の方々が続々と記念撮影をしている前で、一人ipadにFLIRONE PROというアタッチメント式のサーモカメラを差し込み、撮影。手がかじかむ寒さで、シャッターボタンを押すのに苦労しました。極寒状態でのバッテリーの減りは、すざまじい。

さて、さっそく、エネモレ画像の鑑賞に移ります。


気温は-5℃、時間は午後5時。日射の影響を避けるため、サーモ画像の撮影は日没後がおすすめです。サーモ画像は、白い部分が一番温度が高く、赤、黄、緑、青になるにつれ温度が下がっていくことを表しています。サーモ画像では、外壁表面は-10℃の表示。

簡易な測定機械なので、部分的な温度は信用できませんが、建物表面は外壁より冷たくなっているようです。しかし、窓やその上が赤く表示され、熱が漏れているのがわかります。なにせ、重要文化財です。ガラスもオリジナルに近い状態で保存されているのでしょうから、最近の樹脂サッシのペアガラス、トリプルガラスよりも圧倒的に熱が漏れる状態なのでしょう。窓の上部、右の角から斜め上に赤い線が伸びています。窓ガラスを伝導して熱が漏れているだけでなく、暖かい空気が窓の隙間から斜め上に流れ出ているようです。

そして気になるのが、三角屋根の軒下に沿って、画像が赤く表示されている箇所です。

こちらの部分については、テクニカルな分析が聞いてみたいです。早速、断熱不動産技術研究部の解説を聞いてみましょう。


技術研究部によるエネモレ解説

空気は、暖かくなると上に登っていきます。この画像に現れている軒下の赤い部分は、暖かい空気が、二階の天井より上の小屋裏まで回ってきて、軒先からでてきていると想定されます。

また、暖かい空気が軒先から漏れているということは、その分、建物の下方の隙間から冷たい空気が中に入ってきていると想像されます。空気が出ていく場所と入ってくる場所の高さの差が高ければ高いほど、空気の上昇気流の力は強くなり、空気の出入りは大きくなります。

一階の床回りに隙間があれば、どんなに一階を温めても、暖かい空気はどんどんと上に登って外に逃げていくので、一階がなかなか温まりません。

暖かく、光熱費のかからない家を作るためには、寒い空気が入ってきたり、暖かい空気が出ていかないよう、隙間のない建物を作る技術がとても重要です。建築用語では、建物の隙間のなさを気密性能といい、C値(cm2/m2:床面積1m2あたりの隙間の面積(cm2))という値で建物の隙間を数値化します。C値は、断熱材や断熱サッシなどによる断熱性能と合わせて、暖かい建物にとても重要な値になります。また、C値の大きな建物(気密性能のよくない建物)では壁の中を室内の空気や外気が行き来するため結露が発生しやすく、建物の劣化の原因となります。

C値は、1990年代以前の建物では測定不能なほど大きいのですが、北海道では、2000年代の北方型住宅で2.0-2.5くらい。最近の高断熱高気密住宅では、0.5cm2/m2まで小さくなってきています。この値は、100平米の広さの建物全体で、隙間が50cm2(だいたい7㎝角の大きさ)しかないことを示しています。

参考までに1950年代頃に建てられたのではないかと考えられる、一般の住宅のサーモ画像を見てみましょう。


やはり、窓とともに、軒下から熱が漏れているのがわかります。この、軒下から漏れる熱が、軒周りを温め、軒先のの雪を溶かしてつららを作ったり、軒上の雪を部分的に溶かして、建物内に漏水を引き起こす、悪名高い屋根トラブル「すがもり」の原因となっているのです。

以上、技術研究部でした。


まとめ

今回紹介した2枚の写真からは、建物の寒さのウィークポイントが窓と隙間、であることと、建物の隙間を通じて熱が下から上に逃げていく、ということを、わかりやすく知ることができました。特に、断熱気密技術の発達していなかった時代の古い建物は、この特徴が顕著に現れます。古い建物の典型的な断熱的特徴を教えてくれた、某時計台。ありがとうございました。

巷では、がっかり観光名所ともいわれているようですが、もうそんなことは言いません絶対。

サーモカメラで覗いてみると、新しい学びが待っています。今後は寒冷地のシンボルとして、断熱リテラシー向上にも一役買ってほしいと思います。

エネモレ百景では引き続き、発見と学びを与えてくれる趣深いサーモ画像を収集していきたいと思います。皆様からの画像提供も募集しております。

さて、次回、第二回目は、ロシアからエネモレ風景が届くようです。「エネモレ百景」では、その後もローカルtoグローバルな感じで情報をお届けしたいと思っています。

お楽しみに。

(文章 丸田絢子 森太郎)

© 2018 断熱見える化チーム

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